「なぜ目標達成をしなくてはいけないんですか!?」への回答

▶︎ 前年を踏襲した目標内容は正解!?
目標を設定している企業は多数ありますが、企業における目標設定の現状と問題点を目標内容と設定方法に切り分けながら見ていきたいと思います。
まず、目標内容についてですが、売上額や粗利額/不良率/納期遵守率/採用人数/〇〇コストの削減額/〇〇システムの導入(稼働)など、成果として挙げられるものが一般的です。
これは企業の戦略や方向性に付随するもので、何の内容が良いのかは一概に言えないです。
例えば、市場においての自社のシェアを高める必要があるのであれば、売上額でなく獲得件数を内容とした方が良いですし、自社の利益を高めなければいけない状況下では、売上額ではなく粗利額を内容とした方が良いです。
このようなことから、目標内容は企業の中で熟考して決めていく必要があります。また、目標内容はほとんどの企業で前年よりは高い目標が設定されています。
これには特に根拠がないことが多いですが、社員が増えたり、諸々の諸経費が増えたりなどから、企業として「成長しないと意味がない」と考えられ、設定されているようです。
この部分に関しても、結局は企業が決められた期間でどこまでもっていきたいかという話なので、正解があるわけではありません。
▶︎ 目標達成をする意味が分からない
つぎに、目標設定の方法を見ていきますが、大きくは以下の3つの方法に分けられます。
企業によってどの方式で設定するかは異なりますが、目標内容と同様に、これが正解という答えはないです。
① トップダウン方式:経営者や場合によっては幹部を交え、目標を設定する
② ボトムアップ方式: 現場社員や管理職が目標を設定する
③ バランス方式:①と②で仮決定した上で、目標を突き合わせ再考し、設定する
②を除いて、全社で目標を設定したら部門や事業部ごとに設定し、さらには個人の目標まで落とし込んで設定することが多いです。
この場合、個人目標に落としこんだ段階でよく出てくる話が、
「何でこの数字になったんですか?」ということです。
これを現場社員が管理職の方に聞くと「決まったんだからつべこべ言わず頑張ろう」とか、「給料もらってるんだから、これぐらいはやらないといけないよ」などと言って理由を説明していないことが散見されます。
最悪な場合では、管理職の方が「なんでこんな目標高いのかな?」ということを言ってしまい、管理職自身も納得感がないままなんとなく進められています。
素直な方でつべこべ言わず「分かりました」という現場社員であればよいですが、私が沢山の企業を見てきた経験では、不満が出ていることの方が多いように思います。
私がある企業で管理職研修を実施した時に参加者からこんなことを言われました。
新人から「なぜ目標を達成しなくてはいけないんですか?と聞かれたんですが、回答をうまくできなかったです」と言っていました。
その企業では、明らかに社員が納得してない目標が設定されており、みんな不満に思っていても口に出さずにいたようです。
そんな状況で入社したての新人が悪げもなく言った一言のようです。
私は面白いテーマだとおもい、参加者の数名の方に同様の質問をしたのですが、回答は以下のものが挙げられました。
〇評価が高くなり、給与が上げるため
〇会社に属している以上、貢献するのは当たり前だから
〇達成感を感じて、仕事を楽しくするため
皆様は質問されたらどのように答えますか?
・・・・・・・
これを境に私は目標達成というテーマが頭から離れなくなってしまい、企業の現場を回るたびに同様の質問をしていました。
質問の解答として一番多いのが「なんでしょうね?」「みんなやってるからですか!?」といった回答が多かったです。
私は、こんなことを繰り返しやっていた中であることを感じ始めました。
それは、意味も分からずに目標が高いとか低いとか感覚で言っているということです。
▶︎目標の意味づけは「みんな」がカギ
そこで、「目標に意味付けができないか?」と考え、実施した取り組みがあります。
結論から言うと、この取り組みは非常に効果が高かったです。
効果が高かったので、今までに何十社のお客様にも取り入れていただいています。
ただし、全ての状況に当てはまるということではないので、参考として捉えていただければ幸いです。
前置きが長くなりましたが何をやったか?というと、今はほとんど聞かなくなった「中長期経営計画」ですが、これを名前を変えて、「社長と社員の夢計画」という名前で社員を巻き込んで作成しました。
具体的には以下のようなものです。

通常の経営計画は数字がほとんどである場合が多いですが、この計画は定性的な話しを多分に入れております。これを1泊2日の全員参加の合宿で作成するのです。
合宿の具体的な流れは下の図の通りです。ご参照ください。
ちなみに余談ですが、どの企業でも「社長と社員の夢計画」の作成、合宿で一番盛り上げるのが、「将来のポスト」「将来の待遇」「将来の働く環境」の3つの話です。
将来のポストですが、若い人からすると今の会社ではポストが無いように見えています。
部長をあと何人増やすか、課長をあと何人増やすか、社長は3人ぐらい増やしたいなどとポストが作れると言うと目の色を変えて発言する人がいます。
待遇は業界平均の給与をベースにどれぐらいが適切なのかを議論しますが、これもまるで自分ごとのように様々な意見が飛び出します。

このような話を交えながら、社員が一緒になって将来を語り合い、夢を作っていきます。
色々な要望を吸い上げ、経営者にプレゼンし、「計画に盛り込むか、見送るか」を判断しながら作っていきます。
「社長と社員の夢画」の定性的な話が決定したら、経営陣だけで数字を作りこんでいきます。
社員がやりたいことや実現したいことをベースに必要な費用などを考えながら作りこんでいきます。
それを3年間分に分割し、年度経営計画に落とし込んでいきます。
もちろん目標達成をしたら、「社長と社員の夢計画」に盛り込んだ社員から上がってきた要望を必ず実施していきます。
例えば、ある企業では女性社員からパウダールームが欲しいと要望が上がり、「社長と社員の夢計画」に盛り込みました。
そこから売上や費用やなどを計算し、3分割にして年度目標まで数字を落とし込んで設定していたのですが、見事に達成しました。
そこで、社長は1年目だが「社長と社員の夢計画」に盛り込んだ内容を1つは実現しようと、即実行し、パウダールームを作りました。
女性社員の面々は大変喜び、「目標を必死に追っかけた甲斐がありました」と社長に話したようです。
ここまで書くと皆様はもうお分かりだと思いますが、「社長と社員の夢計画」を実現するために目標を達成する、パウダールームを作るために目標達成するといった形で、冒頭の話であった「目標達成への意味付け」がされたということです。
これによって目標設定への不満は減り、逆に目標達成へ邁進する社員が増えていきます。
さらには、多くの企業から、組織の一体感が生まれ非常に良かったというお話をいただき、副次的効果もある施策だということが分かりました。
価値観が多様化している昨今の状況下では一人一人の夢が異なりすぎて、一人一人に即した夢を見せ続けるのは難しいような気がします。
また、仮に夢を見せられたとしても、バラバラに描いている夢をベースとして全社員をまとめていくのは困難なように感じています。
若い社員の中には夢が無いという方も多いです。
一人の夢よりみんなの夢を実現するのが楽しいとおっしゃる方は沢山います。
「なぜ目標達成しなくてはいけないんですか?」
みんなの夢を実現するために!
・・・これは納得感のある回答ではないでしょうか。