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「それ、本当?」と聞ける人だけが、現場を読み切れる

「それ、本当?」と聞ける人だけが、現場を読み切れる

目次

  1. 現場の声は“本音”ではない
  2. 人は無意識に「嘘」をつく
  3. 情報を“信じる”のではなく、“裏を取る”
  4. コンサルタントの8つの確認術
  5. 判断軸は、思考停止を壊すためにある
  1. 現場の声は“本音”ではない

「社員からいろんな意見が出てきたんだけど、どこまで聞くべきですか?」

ある経営者から、そんな相談を受けた。
人事異動後、新しいチームとの面談を重ねる中で、多くの“声”が上がってきたという。
だが、それをどこまで信じ、どこまで反映すべきかで迷っている。

その迷いは正しい。
なぜなら、“現場の声”は、必ずしも“真実”ではないからだ。

  1. 人は無意識に「嘘」をつく

人の言葉は、以下の理由でねじ曲がる。

  • 本音を隠すために
  • 他者への配慮として
  • 自分の利益のために
  • 無意識のバイアスで
  • よく知らないのに言っただけ

重要なのは、本人が「嘘をつこう」と思っていなくても、
結果として“真実ではない”言葉になることがある、という点だ。

だからこそ、経営者や現場支援者は「聞く力」以上に「疑う力」を持たねばならない。

  1. 情報を“信じる”のではなく、“裏を取る”

コンサルタントの現場は、情報戦である。
誰が、何の意図で、どう語っているのか。
表層の言葉に踊らされれば、現場の“構造”は見えてこない。

だから私たちは常に「両面取材」を徹底する。

  • その意見は、他の利害関係者からも出ているか?
  • 異なる立場から見ても同じ事象が語られているか?
  • 数字や資料に、一貫性と妥当性はあるか?

重要なのは「聞いたことを信じる」ではなく、「聞いたことを再検証する」ことだ。

  1. コンサルタントの8つの確認術

以下は、現場で頻出する“要注意発言”と、私たちが行っている確認の一例である。

  1. 「◯◯さんが言っていた」
    → 本人に聞くと、前提もニュアンスもズレていることが多い。
  2. 「このKPIが重要です」
    → どこで、どう測定したのかを聞くまで信用しない。
  3. 「みんなそう言ってます」
    → 「みんな」の具体名を求めると、急に人数が減る。
  4. 資料を見せられたとき
    → 作成者と目的を確認。資料は“演出物”として加工されていることが多い。
  5. 「ルールだからできない」
    → 本当にルールか、権限者に直接確認。ほとんどは“思い込み”。
  6. 「◯◯をやりたい」
    → 言わされていないか、期限・範囲・動機を深掘る。
  7. 「上の指示です」
    → 上司の名を聞き、確認を取る。伝言ゲームの“変異”がほとんど。
  8. 「これは課題です」
    → 実際に何をしているか聞く。動いていないなら“本気”ではない。
  1. 判断軸は、思考停止を壊すためにある

情報を鵜呑みにして動けば、現場に振り回されて終わる。
だが、疑いすぎても信頼を失う。
そのバランスを取るために、私たちは“構造的な裏取り”をする。

情報の真偽を見極めるとは、単に「正しいかどうか」を判定することではない。
“言葉の背景”にある意図・立場・関係性を読み解き、「なぜこの発言が今ここで出たのか?」を問うことだ。

そして、判断する側の覚悟が試される。
問いを深める人だけが、現場の“本当の地雷”を見つけられる。

終わりに

「人の言うことを信じるな」
そう言いたいわけではない。

だが、「人の言葉は常に不完全だ」という前提に立てない人が、現場を導くことはできない。

聞く力と、疑う力。
この両輪がなければ、判断は表層に流される。
そして、判断の浅さは、必ず現場の“混乱”となって跳ね返ってくる。

信じるのではなく、確認する。
それが、プロの条件だ。

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