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「仕事って何か、わかってるか?」と問われて答えられなかった日のこと

目次

1.問いかけから始まる仕事の本質
2.「課題」とは何か――その定義を知らずに働いていないか?
3.すべての仕事は、“他人”から始まる
4.自分にしか興味がない人が、なぜ仕事ができなくなるのか
5.忘れられない問いと、私の原点


1.問いかけから始まる仕事の本質

「仕事って、何だと思う?」
新人時代、そう問いかけられたことがある。問いかけたのは、社内で「オジサン」と呼ばれていた、背中からシャツが出ているベテランの上司だった。雰囲気はゆるいが、問いかけは鋭い。

「顧客にサービスを提供すること」「お金をもらうための作業」――同僚たちが口にする言葉に、彼は静かに首を横に振った。

「仕事とは、課題を解決する行為だ」
その言葉が、腹に落ちた。だが、彼は続けた。
「じゃあ、課題って何だ?」


2. 「課題」とは何か――その定義を知らずに働いていないか?

「やるべきこと」「問題点」「困りごと」――そんな表現では、彼は満足しなかった。

最終的に彼が言ったのは、
「課題とは“課された問題”のこと」
つまり、「誰かがそれを解決すべきと判断し、リソースを割くと決めたもの」。

ただの「問題」では仕事にならない。
それを「やるべきこと」に変える力が、仕事の起点なのだ。


3. すべての仕事は、“他人”から始まる

この定義に続けて、オジサンはこう語った。
「仕事の基本とは、“他人に興味を持つこと”だ」

最初はピンとこなかった。だが、今ならはっきりわかる。

自分のやりたいこと、好きなこと、得意なこと――それらだけで完結する仕事はほとんどない。
社会も、会社も、他者が存在するから成り立つ。
相手の期待、困りごと、判断基準。それらを“他人事”にしているうちは、仕事にならない。


4. 自分にしか興味がない人が、なぜ仕事ができなくなるのか

現場で迷い、仕事に手応えを持てず、すぐ「評価されない」と嘆く人の多くは、自分視点で止まっている。

「自分は頑張っている」
「なぜ認めてもらえないのか」
「もっと自由にやらせてくれれば成果が出るのに」

そうやって、世界の中心が「自分」になる。
だが、他者への興味を持たない人は、仕事の“文脈”を読み取れない。
だから、動きがズレていく。

課題は、他人の視点の中にしか存在しない。
つまり、「他人の現実」に興味を持てるかどうかが、仕事の精度を決める。


5. 忘れられない問いと、私の原点

オジサンは、若手に煙たがられないように配慮しつつも、言うべきことははっきり言った。
「君の仕事観は、自分中心すぎる」
この言葉は、当時の私の胸に突き刺さった。

それから私は、自分の思考回路を問い直すようになった。
誰のための仕事か?
誰が困っていて、誰が評価を下し、誰が成果を受け取るのか?

“他人を出発点に考える”――
それが、私の仕事観の原点であり、今も変わらぬ信念だ。

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