「考えて動け」が伝わらないのは、問いが浅いからだ
目次
- 「もっと考えろ」が響かない理由
- 深く考えるとは、“疑う力”を持つこと
- 思い込みを崩すには、構造化された場が必要だ
- 経営者が仕掛ける「前提を疑う会議」
- 前提を壊せる組織だけが、生き延びる
- 「もっと考えろ」が響かない理由
「もっと売上を上げる工夫をしろ」
「ちゃんと考えて動け」
これは多くの社長が日常的に口にする言葉だ。
だが、部下に届いていないこともまた多い。
なぜか?
それは、“何をどう考えればいいか”が言語化されていないからだ。
「考えろ」と言われても、本人なりには考えている。
だが、現実は動かない。
つまり、考え方そのものがズレている。
- 深く考えるとは、“疑う力”を持つこと
「深く考える」とは何か?
哲学者も経営者も、その問いに悩んできた。
共通するのはひとつ。
「当たり前を疑う」ことだ。
スターバックスは“喫茶店=喫煙可”という常識を疑い、
禁煙・長居歓迎という真逆の価値を打ち出した。
アインシュタインはニュートン力学を疑い、
相対性理論を生み出した。
「当然とされていることは、本当に正しいのか?」
この問いこそが、深く考える第一歩になる。
- 思い込みを崩すには、構造化された場が必要だ
とはいえ、「疑え」と言われても、現場では難しい。
疑う行為は、反論や否定と受け取られやすく、
人間関係を壊すリスクがある。
だから私は、会議の中に「疑ってよい時間」を明示的に仕込むよう提案している。
たとえば──
- 「今からは“前提を疑うタイム”です」と区切る
- 「この時間は否定せずに話す」というルールを宣言する
- 「会議外での愚痴はNG」と会議前に宣言する
これにより、“問い直す”ことが目的となり、攻撃や否定とは切り離される。
- 経営者が仕掛ける「前提を疑う会議」
前提を疑う場は、単なる意見交換ではない。
それは、「深く考える力」のトレーニングの場である。
たとえば、こう問う。
「このKPIは、本当に売上につながっているのか?」
「顧客満足は、今の調査項目で測れているのか?」
「過去の成功パターンは、まだ有効なのか?」
これらは、“正しいことを否定する”のではない。
“正しさの前提”を更新するための問いだ。
- 前提を壊せる組織だけが、生き延びる
変化が激しい時代において、
過去の“正しさ”は急速に腐る。
「これまではこうだった」
「みんなそうしている」
「昔はそれで売れていた」
これらは、企業を止める“思考停止ワード”だ。
それを破るのが、「考える力」である。
そして、「考える力」とは前提を壊す力に他ならない。
だから私は、ルール化された会議の中で“考える”を仕掛ける。
それが組織に思考の筋力をつける、最小の実践単位だと信じている。
終わりに
「もっと考えろ」と言う前に、
“何を疑えばいいのか”を明確に伝えること。
そして、安心して疑える場を整えること。
それが、現場に“考える力”を宿す唯一の方法だ。
思考はセンスではない。
技術であり、仕組みである。
あなたの会社に、その構造はあるだろうか?