企業カルチャー構築の事例紹介
▶解決策 現状維持バイアスから解放されよう
少し脅すような内容になってしまいましたが、実際に私の元を訪れる後継者の多くは、自分が我慢することでなんとか乗り切ろうとして、「もうこれ以上どうしようもない」と困りきっています。
先代が築き上げてきた会社を自分が崩壊させてしまうのだけはなんとか避けたい。
百数十名いる従業員の雇用と生活を守るために継続していかなければいけないという現状維持バイアスに陥ります。
承継前に抱いていた「自分の代でさらに会社を成長させよう」という当初の志はどんどん低くなっていくのです。
▶「昔からこうです」とは言わないカルチャー
B社の2代目である日下部社長(仮名)は、承継後、従業員のある言葉に強烈にストレスを感じていたといいます。
それが、「昔からこういうやり方をしていましたから」というものです。
B社には日下部社長が承継する前から、「昔から同じことを行うのがこの会社の伝統だから守っていこう」という社内の雰囲気があり、新しいことを始めようとすると、
「周りも戸惑うし、いろいろ言われるので嫌だ」とか、
「やるといっても、自分からすぐ変えようとするのは恥ずかしい」
「前からやっていることだから、変えなくてもまあいいか」
という意識が社員全体に充満していたといいます。
カルチャーというよりは空気感に近いかもしれません。
そこで、日下部社長は「昔からこうです」と言わないというカルチャーを作成し、明文化しました。具体的な行動指針は以下のとおりです。
加えて、以下のような言葉を添えました。
仕事は常にイノベーションの連続です。脱皮できない蛇が死んでしまうように、イノベーションできない組織も社会から取り残されてしまうのです。
何かをやるときは、慣例にとらわれずに白紙の状態で考えてみること。
「それが必要なのか」「目的、成果は何か」。
このときにただ単に「昔からこうです」と言ってしまえばイノベーションはできません。
なぜ昔からこうなのか。変える必要はないのかをまず考えてみて、1番成果が上がる方法をとってみよう。
「先代社長の頃からこういうやり方をしていました」
「このやり方は、わが社の伝統だ」という従業員からの言葉は、
後継者であれば誰もが一度は耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、「昔からこうだ」という古い慣習や企業風土を変えることこそ
後継者として取り組むべき仕事です。
「昔からこうです」と言わないというカルチャーは、とてもストレートな言い方です。
それでもあえてカルチャーとして明文化することで、従業員一人ひとりに浸透していきます。
「昔からこうだ」ではなく、「こうやり方を変えてみる」「こんなことにもチャレンジしてみる」など、現状維持バイアスから解放されるのです。
自分の組織を「再起業」するつもりで先に、先代経営者はカルチャーで人材を採用してこなかったと述べましたが、逆に企業のカルチャーを作成して前面に打ち出し、積極的に採用活動に取り入れているのがベンチャー企業です。なかでもインターネット広告事業を行う
サイバーエージェント(藤田晋社長)のカルチャー採用は有名です。
「人材こそが競争力」というキャッチフレーズで、仕事は与えられるものではなく、自分で創るものという意識が従業員の一人ひとりに浸透しています。
このように、ベンチャー企業のカルチャーをベンチマークして、自社のカルチャーに積極的に取り入れていき、承継することで自社もまた「再起業」するつもりで新たにカルチャーを
構築していくことです。
例えば、次の言葉はカルチャーとも関係しています。
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何をするにも5分前行動
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守秘義務は絶対守れ
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小さな納期も必ず守れ
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小さな約束事こそ大事に守れ
4の〈小さな約束事こそ大事に守れ〉をカルチャーにするのであれば、以下のようになります。
社内や顧客との間で交わされた「小さな約束事」は、一見プライオリティが低く、他の仕事が忙しいあまり後回しにしてしまいがちです。
約束の期日が来て「忘れていました」「できませんでした」と言っても、優先度が低いのであまり影響はないだろうと考えています。
しかし、自分にとってはどんなに「小さな約束事」であっても、相手にとってはそうではない可能性もあり、約束を守らないことで相手からの信頼を失いかねないのです。
どのような小さな約束事でも、それをきちんと守るということは、「相手のことを大切にしている」という気持ちの表れです。
契約のような大きな約束は、誰もが守ろうとします。けれど、「大きな約束」だけが守るべき約束ではありません。
むしろ、「小さくて、些細な約束」を守り続けるほうが、相手に信頼されることがあります。
「約束には、大小も、強弱もない」のです。
いかがでしょう。こんなふうに、1つのキーワードからカルチャーとして構築することができるわけです。
次回もお楽しみに!
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