社員研修を受けて身につくものは 正しい自己認識である

▶︎ 社員研修を実施すると生まれる2つの課題
弊社では社員研修を提供しておりますが、社員研修は人材育成のひとつの手段であり、必ず必要なものではないと考えます。
一方で、社員研修の市場規模は約5000億円に及び、ここ10年程変わっておらず、それなりの市場規模であることがわかります。
昨今の仕事環境において、より高度で複雑な仕事をしていくことが求められており、より一層その潮流は高まることでしょう。
こうなると、今後更に市場が増大していくのではないかと考えています。
このように、社員研修は人材育成の一つの手段であるのにも関わらず、多くの企業が時間とお金をかけ、実施しているのはなぜでしょうか!?
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私がよく聞く社員研修に対しての期待は以下のようなものがあります。
● 他社の人と交わって刺激を受けてほしい
● やる気を増大させたい
● 社内の共通言語を作りたい
● やり方を吸収し、現業に生かしてほしい
● 様々なスキルを身につけてやれることを増やしてほしい・・・ など
このような期待をし、多くの企業が実施している一般的な社員研修の取り組みを少しご紹介致します。
研修のテーマは通常、人事の方や経営者が教育計画なるものを作り、その計画に基づいて実施をしていきます。計画を作成する段階で、経営戦略を明確にし、その戦略を遂行するために必要なスキルを階層別で定義することもあります。
この場合、そのスキルを習得するために必要な手段や内容を併せて検討していきます。或いは、社長が受講して良いと思った研修を取り上げて実施することもあります。
また、人事の方や部門長が世の中で目に付いた研修をピックアップし、社員に行かせているケースも多くあります。
時間や費用の製約、期待する効果によっては、研修を受講スタイルも選定している企業もあります。
主に分類すると研修の受講スタイルは以下の3つとなります。
1. 講師を呼んで自社内で実施する企業内研修
2 .金融機関や商工会議所などが主催する公開研修
3 .PCやインターネットで研修を受講するe-ラーニング
このような形で研修のテーマ・受講スタイルを決め、実施していくと必ずと言っていい程、2つの課題が出てきます。
1. 受講の動機づけがされてないので真剣に受講せず、効果が出にくい
当たり前ですが、受講者は計画作成や研修選定に携わっていないので、「なぜこの研修が必要なのか?」は理解ができていません。説明しても納得感が低いことの方が多いです。
2 .受講者のスキルレベルと研修内容のミスマッチ
成果が出にくい公開研修に参加する場合においては、テーマありきとなっていることが多く、どのような人が受講するのが適切なのかが軽視されてしまうことが非常に多いです。
また、企業内研修を実施しようというケースでは、研修内容を決めていく際に、「どのレベルの人達に内容を合わせるのか」を併せて検討します。
この時にほとんどの企業は「レベルの低い人に合わす」と決めて実施し、レベルの高い人は「何でこんなことを聞かなくてはいけないのか?」という反応になります。
▶︎ 社員研修の失敗は階層別教育にある!?
私はこの2つの課題の本質は“階層別教育”にあるではないかと考えています。
階層別によって必要なスキルを定義して実施するというのは一見正しいと感じますが、個人によってスキル・知識レベルが異なるので本人がほしい知識やスキルではない場合が多くなります。
併せて、中堅中小企業においては中途採用も多いので、前職での経験や受けてきた教育などが大きく異なり、同一の階層でもスキルや知識レベルに開きがあります。
これによって、階層別教育を失敗している企業が非常に多く見受けられます。
しかし、スキルや知識レベルに焦点があたることは少なく、多くの場合、社員の研修に対するやる気が問題視されることとなります。
研修の受講者に率直な話を聞くと、大半の方が「自分が必要なもの/足りないものは吸収しようという意欲が沸くが、自分ができていることや実務で使えなさそうだというものには興味が沸かない」とお話しされます。
要するに、研修の受講者が知りたいものと研修テーマ・内容の選定者(計画作成者)が受けてほしいものにミスマッチが起こっているということです。
もう一段掘り下げると、これは研修テーマ・内容の選定者(計画作成者)が研修内容を理解できていないことに起因します。
研修内容を理解しようと概要やカリキュラムを講師と相談はし、説明を受けますが、なかなか理解できないのが現状です。
さらに言うと、受講者が何に悩んでいるかも研修テーマ・内容の選定者(計画作成者)は理解できていないことが多々あります。
これは普段、研修受講者と密に接していない人事の方や経営者が、現場の課題や悩みを理解しろというのが無理な話で、このような状況に陥るのは当然のことだと思います。
ちなみに、必ずしも階層別教育が失敗に陥るわけではありません。
例えば、今まで全く知識のないハラスメントや財務の知識などを習得するということであれば、むしろ階層別教育の方が良いかもしれません。
▶︎ 社員研修は個人別に考えるべきである!?
では、どのようにやっていけばよいでしょうか!?・・・・・・・
弊社の支援事例をもとに解説をさせていただきます。
弊社が支援で実施していることをまとめると3つです。
1. カウンセリングの実施
個人ごとに課題や悩み、或いは人事評価で上司から言われていることを聞き出します。課題や悩みが漠然としている場合には意見交換をし、解決すべき事柄を炙り出します。
これをやっていくと沢山の異なる内容が出てきますが、優先順位を3つほどに絞ります。
絞られたら、弊社担当は研修内容を理解しているので、課題や悩みに対して解決できる研修をその場でご紹介致します。併せて、研修だけでは解決しきれない場合は、取り組んだ方がいいことやポイントなどをアドバイスしております。
もちろん、全ての課題や悩みを必ず解決できる研修があるかというとそうではないですが、いくつか挙げていただいた課題や悩みの中には、マッチする研修があるのが大半です。
ここまでくると、受講者は受講するべきテーマを理解していただき、「これを受けます」となります。これでその人に合った、研修計画が策定され、少しではありますが動機づけがされます。
2. トレーニングを中心とした内容
トレーニングは文字どおり「聞いて学ぶのではなく、繰り返しやってみて身につける」ことを目的としています。
スポーツの例を考えたらすぐ分かるとおもいますが、フォームを変えるには練習が必要です。
平泳ぎしかできない人がいきなりクロールはできません。
よって、弊社のトレーニング研修では「『知っている』から『やれる』」をゴールとしています。
トレーニング研修では動画やワークシートを用いて実施していきますが、あくまで自己チェックを重視しています。
なぜかというと、できていないことや改善点は人に言われるより自分で気づいた方が納得感が高く、自己認識を高めるからです。
ここで自分ができていないことに初めて腹落ちする参加者も多く、腹落ちしたら研修は成功と言っても過言ではないです。
こうなると自分で努力をしたり、常に意識をするという気持ちが芽生えてきます。
トレーニング研修においては、繰り返し受講していただき、トレーニングできる仕組みとなっており、自己チェックによって卒業を判定します。
ちなみに、変化率という指標で受講後アンケートをとっているのですが、変化を感じたという方が8割を超えています。
3.目的との対比
当初作成した個人別の受講計画と対比して効果測定を行います。
当初の課題や悩みに対して、解決したか/スキルは向上したか自分で評価していきます。
当然、努力をしている人は効果を実感しますが、一方で努力しない人は効果を感じないまま一年を過ごしています。
最後に、必ずしも全員が上手くいく社員研修はないのではないかと思っています。
ただ、社内の人材育成においても個人によってアドバイスをしたり、やらせてみたりとやり方を変えるように、社員研修も個人の課題や悩み/スキルレベルのちがいによって、各人に最適なものを適用していく必要があると思います。
これまでのやり方が上手くいっていない企業の方は自社の社員研修を見直してみてはいかがでしょうか。