やる気に影響を及ぼす人事評価結果のフィードバック
※ フィードバック:評価した結果を、その行動した人に対して伝え返すこと。
人事評価制度について
”人事評価”について、企業規模が小さいうちは評価制度という仕組みもなく、
経営者の頭の中でやっている会社が多いです。
しかし、企業規模が大きくなってくると、経営者1人では全社員を見きれないので、
人事評価制度を作ろうということで、制度作りに着手するケースをよくお見受けします。
人事評価制度を作っていくと多くの場合、評価者は管理職になるケースが多いです。
管理職が評価をし、その評価結果を経営者がチェックをして評価結果が決まります。
企業によってはここで、経営者と実際評価した方とですり合わせを行う場合もあるようです。その後は、決まった評価結果を管理職(評価者)が社員(被評価者)に
フィードバックしていきますが、多くの場合、この時に問題が起こります。
上司評価が低くて、部下評価が高い場合が圧倒的に多い!?
評価結果についてのフィードバックの難易度を図にしてみました。
私が見てきた管理職(評価者)の多くが悩んでしまうのが一番下の「上司評価が低くて、部下評価が高い」場合のフィードバックです。このケースは割と多いのです。
このケースの場合、皆様は何に気をつけてフィードバックを行っていますか?・・・・・
これを失敗すると「本当に辞めてもらいたくない人」が退職してしまうことになります。
実例を少し加工した鈴木課長(評価者)と佐藤さん(被評価者)のやり取りを例に、
フィードバックに必要なポイントをご紹介します。
[ポイント1]まずはほめることからスタートする
鈴木課長:「今日は佐藤さんの良いところをお伝えし、成長のために気づきを得てもらいたいと思います。佐藤さんのお話をじっくりと聴くので、思ったことをどんどん話してくれていいですよ。まず、前期を振り返って、佐藤さんの率直な感想を教えてください」
佐藤さん:「いやぁ……個人目標は不測の事態もあって、残念ながら達成できなかったですけれども、自分では努力を尽くしたと思います。」
鈴木課長:「そうか、なるほど。では、前期、佐藤さんが自分を振り返って、 成長したなぁと思うことは何ですか?」
佐藤さん:「そうですね……。商談の質を上げるために、お客さんの業界の本を結構たくさん読みましたし、商談前にお客さんのお悩みを考えて臨みました。」
鈴木課長:「たしかにね。営業同行した時、感じたけど、佐藤さんはすごく工夫して質問しているよね。それに、お客さんの心のつかみ方が抜群にうまいよね。」
佐藤さん:「いやあ、それほどでも……。」
鈴木課長:「他にはありますか?」
佐藤さん:「・・・・・特にないですけど。」
鈴木課長:「そうか、じゃあ、私の感想だけど、佐藤さんは後輩の面倒見がすごくいいよね。後輩の山田さんが悩んでいるとさりげなく相談に乗ってあげたり、ガス抜きで飲みに連れて行ったり……、結構見えないところでうまくフォローしてくれて、本当に助かるよ。」
佐藤さん:「いやあー、それほどでも。それにしても、課長は私のことを結構見てくれているんですね。」
鈴木課長:「佐藤さんには期待しているからね。さて、今日の本題の前期評価の話に入ろうか。」
・・・・・
ここから皆様ならどのように結果を伝えますか?
結果は、上司評価が低くて、部下評価は高い場合です。
[ポイント2]評価結果だけを伝えて、ひたすら聴く
鈴木課長:「(前略) さて、今日の本題の前期評価の話に入ろうか。
佐藤さんの自己評価では、5段階評定SABCDのどこぐらいだと思う?」
佐藤さん:「うーん、そうですね ……。まあ、Bくらいかと。
まず、個人目標に到達しなかったので申し訳なく思っています。
ただ、自分なりにやれることは精一杯やったので、Bだと思います。」
鈴木課長:「そうか。佐藤さんの自己評価ではBか。(沈黙・・・)
では、評価した結果をお伝えしましょう。
(評価結果の紙を見せながら)前期の佐藤さんは、一番下のDです。」
佐藤さん:「えーっ……なぜ、Dなんですか?納得できないです。」
鈴木課長:「そうだよね。納得できないよね~。今日は納得いくまで佐藤さんの言い分を聴くので、じっくり話してごらん。」
佐藤さん:「そもそも評価がおかしいですよね。目標は確かに未達成ですけれども、条件がめちゃくちゃに悪い中で8割くらいはやったわけですから。そういうことが全く評価されていないですよね。こんな評価ってないんじゃないでしょうか?お言葉ですが、課長の評価は、ちょっとおかしいと思いますよ、本当に。」
鈴木課長:「そうだよね。」
佐藤さん:「だってひどいですよ、前期の最後の1ヶ月は、私の担当エリアを課長に無理やり取り上げられたんですから、目標達成できないのは当たり前ですよ!あんなの営業マンの立場だったら、たまったもんじゃないですよ!みんな課長のせいじゃないですか!それをD評価だなんて・・・。こんな評価は全く納得いかないですよねぇ!!」
鈴木課長:「(沈黙・・、怒りをこらえる)そうだよね、納得いかないよね。他には?」
佐藤さん:「他の人はどうなんですか!?私よりもずっといい条件の楽なエリアを担当して、たいして実力もないのにラッキーでたまたま受注している人もいるじゃないですか?そういう人だけ贔屓して甘く評価するのはおかしいですよね。会社として不公平ですよ。たぶん、田中さんなんて、一番いいエリアで最初からすごく恵まれてれていて、今回もとりあえず達成したからどうせA評価だと思いますけど。あんなおいしいお客様ばっかりのエリアをやってたら誰だって目標達成できますよね。だって田中さんの成果なんて多分ラッキー受注だらけですよ!一方でそんな甘い評価をしておいて、私にはD評価だなんて……、もう基準自体がおかしいんじゃないですか。ひどいと思いますよ!私だってあんなエリアだったら、絶対達成できますよ。ひどい不公平です!」
鈴木課長:「そうだよね、不公平、か……。(沈黙) 他には?」
佐藤さん:「とにかく、どう考えたって不公平です。まるっきり、おかしいですよ!」
鈴木課長:「わかった。佐藤さんの気持ちは理解した。佐藤さんが冷静になって話をするために一週間後にもう一度やろう。」
[ポイント3]一回ではなく、複数回実施する
一回ではなく複数回実施することにより、時間の経過とともに部下は冷静になれます。
そして少しずつですが、納得する方向に向かっていくと思います。
杓子定規に1回で終わらせると形式としてやっている感じが社員(被評価者)に伝わり、納得感は醸成されにくくなります。
よって、場合によっては2回・3回と実施して社員(被評価者)に「正対」することが必要ではないでしょうか。
こうすることで、「部下も自分を気にしてくれている」必ず感じるはずです。
社員(被評価者)が不満や納得できないことを表立って言う反抗的なケースはあまりないかもしれませんが、言葉にしなくても思っていることが沢山あり、それを吐き出さずに不満をためていきます。
それが積み重なると、最悪の場合、辞めてしまうのです。
今回は評価結果のフィードバックについて、主だったポイントをお伝えしました。
弊社のセミナーでは、この後の展開も含めて「評価者としてどのように対応するとうまくいくのか?」についてケーススタディーを用いて学んでいきます。また、他の細かいポイント等々もお伝えしております。ご興味があれば、評価者の方に参加していただければ幸いです。