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「成長実感」を求めているうちは 「真の成長」をしていない

▶転職を考えるタイミングはいつか?

先日、お客様の社員の方から相談を受けました。

29歳の男性です。
サービス業で働いていて、会社の中では期待の若手社員です。
社長からもそのように聴いており、数年後が楽しみと言っていました。

そんな彼から
「加賀さん、最近成長実感が無くてつまらないんです。
ここ数年、やっていることは同じで普通にやっていれば成果は出ます。
そろそろ転職しようかと思ってます。」

こんな相談を受けました。

「会社に不満があるんですか?」

私が質問すると、

「いや、会社に不満はありません。
給与も休みも同業他社と比べると良いです。特に不満は無いんです。
ただ、本当に成長実感が無いだけなんです。加賀さん、これおかしいですかね?」

私は回答に詰まりました。
皆さんならどのようにお答えしますか?

パーソル総合研究所の調査では、
(出典:パーソル総合研究所「人々の働くことを通じた成長」をメインテーマとした
1万人規模の就業実態調査より)

「成長実感」は、「その会社で働き続けたい気持ちを上げる」ことに繋がり、
その効果は、「成長志向」のおよそ3倍ほどあると分かりました。

と書いてありました。

上のグラフは、「成長実感」と「成長志向」が、仕事への意欲や就業満足度、
組織のパフォーマンスといった、働くにあたって重要な要素にどれくらい
影響を与えているかを見たものです。

それぞれの項目を結果変数にした重回帰分析の結果を示しており、
オレンジが成長実感の、青が成長志向の影響度をそれぞれ表しています。
(また、性別年齢やその他基礎属性は影響を除くため、コントロールしています。)

オレンジと青のグラフを比べると、影響度は大きく差がつきました。
どの項目に対しても、「成長実感」の影響度のほうがずっと大きくなっています。
特に、仕事への意欲で3倍、就業満足度では、6倍もの差がついています。

 また、図の右側に示しましたが、「成長実感」は「その会社で働き続けたい気持ち」を
上げ、「転職意向」を下げており、成長志向に比べてリテンションの効果も大きそうです。

端的にまとめれば、成長は「志向する」ことだけではほとんど仕事への意欲や満足度を
向上させておらず、実際に「実感」することができるかどうかが就業意識を大きく変化
させるということです。

また、特に男性は30代から40代にかけて、女性は20代から30代にかけて、
成長実感を得にくくなる実態がレポートで示されています。
「仕事がつまらなくなってくる」「限界を感じる」「転職したくなる」のは、
ちょうどこの時期なのだろうと思います。

このレポートは、
「社員を会社に引き止めるには、成長実感を感じさせることが重要」と締められています。

▶成長実感と真の成長は同じなのか?

このレポートを見ていて、自分自身を振り返りました。
確かにそんな時期もあったようにも思います。
仕事において成長実感は悩ましいテーマでもあります。

当たり前の話かもしれませんが、「成長実感は上達レベルが低い時には感じるが、上達レベルが高くなってくると感じにくくなる」(上図を参照)

 例えば、私は学生時代バスケットボールをやっていました。
中学校から始めましたが、最初はドリブルの練習をさせられました。
ボールを見ることなくドリブルができませんでしたが、少し経つとできるように
なりました。成長実感を感じた瞬間です。

次にシュートの構えを教えてもらい、最初はなかなか入りませんでしたが、
徐々にシュートも入るようになりました。
ドリブルシュートも練習するうちにできるようになり、やれることがどんどん広がり、
更なる成長実感と楽しさを感じました。

そして、気が付けば試合にも出れるようになっていました。
ただ、この頃になると「もっと上達するため、試合に勝つため」と苦しい・キツい練習になってました。

毎日同じことの反復練習で楽しくもなく、しんどいことばかりになっていました。
結果、この時から成長実感や楽しさはほとんど無くなっていました。

どういうことだろうか。

結論を言うと「成長実感」と「真の成長」は違うような気がしています。

むしろ成長実感があるうちは、真の成長をしていないのではないか?と思います。

先例の通り、成長実感を得やすいのは上達レベルが低い(初心者)時です。
成長実感とは、「目標を達成したとき」に感じるものであり、ある程度の

レベルになると目標が高くなり、なかなか達成できなくなります。

要は、ある程度成長してしまうと、簡単にクリアできる目標がなくなります。

そして、そこを通り越すと、一流になるための目標レベルに入ってきます。
そして、一流になるためには相当の努力が必要です。

「全国大会に出場する」「全国大会で優勝する」などは一流の目標設定であり、
これを達成するために血のにじむ努力を必要とします。

日々実感できる、わかりやすい成長実感は、ここには存在しません。
「一流」のゾーンでは、「本質的におもしろくないこと」に延々と取り組むことが
要求されるからだと感じてます。

もちろん、誰しも一流を目指すわけではありません。

楽しいだけで止めて、転職を繰り返したり、新しいことにチャレンジするのも
悪くないかと思います。

だが、楽しさを原動力としての成長は、レベルの低いうちには有効ですが、
ハイレベルの戦いにおいては、楽しさの源泉である「成長実感」を
得られるシーンはそう多くはありません。

つまり、「成長実感が無くなってからが、真の上達のはじまり」と知る者だけが、
一流になることができるのだと思います。

皆さんの社員はいかがでしょうか?

 30代前後のバリバリと働き、活躍してもらいたい社員に
「成長実感が無くなったので、転職したい」と言われたら、

 「ここからが真の成長だろう」と一声かけられる・・・

 そういう先輩・上司・経営者が必要なのかもしれません。

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