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【連載企画】VOl.21『後継社長力』~事業承継を成功させるための「正しい順序」とは~

地域ビジネスの承継を成功させた4人の経営者たち(四人目)すべての役員を降格して組織改革を断行した後継者

目次

  1. すべての役員を降格して組織改革を断行した後継者の話

  2. 子会社を本社に吸収合併

  3. エネルギー分野ではない新規事業を模索

  4. 「0・5歩先」を照らすコンサルティングを

▶すべての役員を降格して組織改革を断行した後継者の話

ガソリンスタンドの営業からスタートし、LPガスの販売、太陽光発電事業など、エネルギー関連分野で事業を拡大していく企業が地方には多くあります。

四国に本社を置くF社も、そんな「エネルギーコングロマリット」企業です。従業員数約300人、売上約250億円。創業者は積極的にM&Aによる買収を行うなどして事業を拡大。地域のエネルギー分野と、住宅のリフォームなど住環境をサポートする企業として成長してきました。

▶子会社を本社に吸収合併

30代で事業を継いだ馬場さん(仮名)は、副社長の時代から私のセミナーに参加するなどして面識がありました。社長に就任後にさっそく実施したのが、パーパスとカルチャーづくりです。パーパスは、「社員のため」「顧客のため」の企業であることです。

地域のエネルギーを支える存在ですので、たとえ会社の業績が悪化したとしても安易に止めてしまえば、地域全体に影響を及ぼします。
社員は責任感と使命感を持って地域に貢献することが求められるわけです。

また、先代がM&Aで買収して子会社化した4つの会社を本社に吸収合併しました。
馬場さんによると、1社にまとめることでバラバラだったカルチャーを統一し、全社員が一体感を持って仕事をしていきたいと考えたそうです。

しかしそう簡単ではありません。これまでもお伝えしてきたように、社員たちを教育しても、カルチャーを変えることはできないからです。

馬場さんに反発する社員や役員もいて、業務面にも支障が出るようになりました。業務全般のデジタル化を推進するために役員会議を開くも、5時間以上の議論を重ねてようやく1つの事業だけデジタル化することが決まるなど、とにかく話が進まないのです。

けっきょくカルチャーに合わせた人事評価制度を導入し、カルチャーフィットする社員を昇給・昇格。役員は、経営の重要事項を決定する権限は保有しない執行役員へと一律で降格するなど、大胆な組織改革を行いました。

さらに採用を強化して、カルチャーフィットする人材が少しずつ社内に増えていきました。

▶エネルギー分野ではない新規事業を模索

一方で、エネルギー関連事業は地方における人口減少問題ともリンクして、現在の事業を継続していくだけでは、売上は毎年減少していきます。先代社長のように同業者の買収によって、エネルギーコングロマリット企業としてさらに事業を拡大していくことも1つの手段です。しかし、このまま同じ分野で拡大路線を続けても、いずれ限界が訪れます。

そこで、馬場社長が新規事業として取り組んだのは、エネルギーとは別分野である農業事業でした。この農業事業は、社内の組織改革を始める以前からスタートしたもので、
社内からの反発も多く、また協力者も得られませんでした。「農業部へ行くのなら辞める」という社員も多く、うまくいかなかったのです。

現在は、頓挫してしまった農業事業の立て直しと、中期経営計画を作ってエネルギー分野ではなく、製造業やサービス業の分野での新規事業を模索している最中です。

カルチャーフィットした優秀な若手も育ち、その中から選抜したチームによって新規事業計画を立てています。

▶「0・5歩先」を照らすコンサルティングを

「加賀さんのおっしゃるとおり、新しいカルチャーを作って、人事評価も大幅に改善したことで、思い描いていた会社経営が少しできるようになりました」

2度、3度と私のセミナーに参加した後継者の多くは、そう笑顔で話してくださります。そんな後継者に対して、私はすかさず以下ように忠告します。

「これから人が大量に辞めていくことになるでしょう。でも、決して慌ててはいけません」

私は何も、後継者のやる気に水を差すつもりで言っているわけではありません。しかし、しばらくすると今度は少し暗い表情で私の元を訪れてこう言います。

「古参幹部を含めて、新しいカルチャーに合わない人が、たくさん辞めていきました。加賀さんから『そうなっても慌てるな』とアドバイスされていなかったら、今ごろ辞める人たちを引き留めようとしたり、辞めた人の穴埋めのために大量に採用していたかもしれません。」

こんなふうに、後継者に起こる課題や問題を次々と言い当てる私を「まるで預言者のよう」という後継者もいます(笑)。もちろん私は預言者などではありませんし、ましてやVUCAの時代ともいわれ、カオス化した経済環境のなかで、10年、20年先を見通すことなど不可能なことです。

私が後継者にアドバイスするのは、「0・5歩先」に起こり得る未来についてです。「たったの0・5歩」と思われるかもしれませんが、10歩も20歩も先の未来だけを見て、足元の障害物に躓いてしまうのが、多くの後継者です。

そんな後継者の0・5歩先の足元を照らし、「こんな課題が発生します」「こんな誤った施策をとってしまいがちです」という障害物の存在を知らせ、正しい解のアドバイスと、共に成長していく後継者のポテンシャルを引き出すのが、私たち「ストロングスタイル」が理想とするコンサルティングです。

事業承継とは、一般的に「自社株式の承継」と「代表者が交代すること」であると言われます。しかし、会社を承継した後継者の多くが実感するのは、株式を譲り受けて経営の支配権を有し、社長の椅子に座ったからといって、会社を経営できるわけではないということです。

後継者は、会社を継いだものの先代からは経営について何も学ぶことができず、周囲に会社経営についての悩みを相談できる仲間もいない。さらに、自分以外の後継者は、皆うまく事業を引き継いで経営しているように見えてしまうものです。

しかし、どの後継者も平穏な顔をしていますが、実際にはあなたと同じような「課題」を抱え、同じように「誤解」をして、誤った施策を打ってしまい悩んでいるのです。

私たちは、「地域企業の後継者、若手経営者と共に成長を目指す」ことをビジョンとし、隠れた地域企業を発見、その企業の課題を一緒に解決していきたいと考えています。皆様の会社の事業承継の成功と成長を心より祈念しております。

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