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年上部下を動かす影響力

▶優秀な社員ほど直面する問題

昨今では企業から企業への人材の流動性が高まり、様々な年代の方が企業間を行き交って

います。

その中で、年上部下への対応をどうすべきか相談されることも多く、各企業で年上部下が

増えてきているという実感があります。

人事制度の構築支援をしていると「年功序列型」から「成果・能力重視型」へ変更したい

という要望が多く、その背景には年上部下の存在があります。

また、優秀な人ほど昇進や昇格が早く、年上部下を持つこととなります。

この年上部下の対応に年下上司は四苦八苦しており、気を遣ってしまい実行スピードが

落ちたり、否定的な場合に押し切れないなどの沢山の苦労があることと思います。

大半の年下上司はできれば衝突せずにスムーズに動いてくれることを願っていますが、

なかなかうまくいっていないのが現状です。

この事象はコンサルティング現場と全く同じ事象であると私は考えています。

私よりも人生の先輩を相手にすることが大半で、何とかスムーズに動いてもらえないかと

努力をしてきましたが、残念ながら失敗続きでした。

そんな状況の中で少しばかりうまくいくコツを身につけましたので、それを体系化して

ご紹介させていただきます。

▶動機と影響力のメカニズム

シンプルに考えると人が動くための動機は3つです。

①損得勘定(動いたほうが得、もしくは動かないと損)
②価値観(例:顧客志向が強い人は顧客のためならすぐ動く)
③なんとなく(なんかよくわからないが動いてしまった)

これが全てだとは言い切れない側面はありますが、大きくはこの3つの動機によって

人々は動いています。

ではこの動機を芽生えさせるためにはどういう要因や影響力があればよいでしょうか?

・・・・・・

この3つの動機と及ぼす影響力をまとめたものが以下の図です。

図12

例えば、“公式の力”で自分が人事権をもっていて、その人事権を使うと

相手は良い評価を受けたいので動きます。これは動機が「損得勘定」でしょう。

“個人の力”が強く(例えば、専門知識を持っている)、

言った通り動いたほうが損をしないなどという場合も「損得勘定」が動機となります。

昔同じ部署で働いていて、一緒に成果を出した経験があるという場合には、

成果の出し方について考え方が一致していて動くということがあります。

これは同じように“個人の力”に入る過去実績が影響力として発揮されていますが、影響を

及ぼす先が「価値観」となります。

相手の人間性にほれ込んでいて、お願いされたことに対して動くといったケースも同様に、

“個人の力”の人間性が影響力を及ぼし、「価値観」の動機が作用するということになります。

共通の知り合いがいることが分かり、何となく知り合いの目があるから動いてしまう。

近しい存在から頼まれると断りにくいとかでやってしまうといった場合があります。

これは“関係の力”が影響していますが、動機としては「なんとなく」だということが分かります。

ちなみに、このような話しをセミナーや講演ですると年下上司は「損得勘定」で動かすのは

避けたいという方が非常に多いです。

そのような方々の話しに耳を傾けると年上部下は損得勘定を出したら反発するというイメージが

根付いているということがよく分かりました。

▶「なんとなく」で年上部下を動かす

つづいては「なんとなく」という動機を見ていきますが、皆様はなんとなく動くことは

ありますか?

・・・・・

思い返すと私はたくさんありました。このなんとなく動いてしまうことについて気になったので

調べてみました。

「なんとなく」動くについては心理学では以下の図に示すような影響力が紹介されています。

図14

みなさんの心当たりのある内容はありますか?

・・・・・

一部だけご紹介しますが、例えば、「前に私の意見を聞きいれてくれたので今回はやります。」

これは返報性の法則です。

或いは、「自分が言い出しっぺなのでやります」これはコミットメントと一貫性です。

これらの状況を創り出していくのが年下上司の腕の見せ所ですが、どれかひとつを使うのではなく、

複合的に使うことが重要で複合的に影響力を及ぼすことで動機が強くなっていきます。

ただし、ご紹介した6つ全てが相手に響くとは限りませんので、自分の持っている影響力と

相手を見定めて使っていくことが必要です。

▶「うん」と言ってもらうためにやること

具体的にどう使うかについてある会社の事例を見ていきたいと思います。

5人の若手部下とベテランの年上部下Bさんを率いている営業部の係長Aさん。

若手部下からは 、紙での細かい作業や事務処理が多いのが面倒です・・・と悩みを聞いていました。

現場をよく知っている係長Aさんもそう思っていましたし、

若手部下たちがこういった無駄な作業や事務処理で何十時間も残業をしていることを

知っていたため、何とかしてあげたいと考えていました。

その時にあるシステムが導入できれば劇的に作業負荷が軽減できることを知りました。

係長 A さんは システムを導入すべく、このことを年上部下Bさんに話しました。

「確かにシステムを入れると作業負荷が軽減できたり効率化が図れるかもしれないけど、

今期の目標も達成していない中で、そこまで手を回す余裕はないし・・・

今期の目標達成に集中したほうがいいよ。

それに、個人的にはシステムとかよりも、人の方がずっと安心だよ。

まぁ、とりあえず、まずは目標達成だよ」と断られてしまいました。

それでも係長Aさんは、何とか導入を前向きに検討してもらいたいと考えていました。

年上部下Bさんは、スマホも持たずPCも持っておらず、今時には珍しい超ステレオタイプでした。

また、普段は競合とシェアの奪い合いをしていることもあり、競合の動きには敏感なタイプでした。

一方社内では、義理堅い性格から人望があり、営業部長からも一目置かれていました。

ちなみに係長Aさんの上司の営業部長からは、営業マン全員が賛成したら導入すると

言われていたそうです。

どうすればベテランBさんの 頭を縦に振らせることができるだろうか?

皆様ならどんな影響力を使いますか?

・・・・・直感ではなく、以下のSTEP で取り組んではいかがでしょうか!?

図15

■STEP1:相手(年上部下Bさん)をどの方向に動かしたいか、明確に描く

→ 紙での細かい作業や事務処理の負担を軽減し、効率化が図れるシステムの導入に賛同してもらう

■STEP2:相手(年上部下Bさん)の今の状況を分析する

・仕事上の役割は?
→ 目標を達成するために、組織をサポートすること
→ 脅威は競合に売上を奪われてしまうことなので、情報収集を担当・プライベートの
価値観や固定観念は?
→ システムよりも人の方が安心だ。
(スマホなども持っていない為、システムには疎い!?)
→ 義理堅いということもあり、受けた恩はしっかりと返すなどの特性がありそう

・Bさんの関心事は何か?
→ 目標数字を達成できるのか?/競合にシェアを奪われないか?/部長から更に一目置かれるには?

■STEP3:相手(年上部下Bさん)にどのように働きかけるかを決める

STEP2を踏まえ何の影響を活用するかを整理すると以下のとおりです。

できることがあるのが見えてきますが、具体的にやる施策を考えると

以下の3つがよいのではないでしょうか?

・部長から一言かけてもらえないか?
・事前に何かGIVEできないか?
・小さなYESを引き出せないか?

実際に係長Aさんは 営業部長に相談し、年上部下 Bさんに 一緒に取組むよう働きかけをしてもらったそうです。

また、競合情報を聞き出せそうな既存顧客を紹介し、年上部下Bさんに訪問してもらった

そうです。

その他も色々とありましたが、紙面の都合もあり、割愛致します。

このような流れやイメージで進めていただければ、皆様もより影響力を及ぼし、

年上部下が動くことと思います。

現場を回っていて感じるのが、今までのマネジメントスタイルではうまくいかないという

事態が日常的に起こっています。

権限や管理・統制だけでは人は動かず、多様化していく現代に合わせて、

年齢や性別を超えてマネジメントしていくことが求められています。

また、これからの年下上司は考えながら人を動かす必要があると考えています。

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