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【連載企画】VOl.1『後継社長力』~事業承継を成功させるための「正しい順序」とは~

後継者は経営者になるまでに何を学ぶべきでしょうか?

「経営者になるまでに何を学ぶべきでしょうか?」

後継者から、こんな質問を受けることがあります。
経営者=社長業とは、社員や役員の延長線上にある「役職」ではなく、「生き方」です。
自己実現のために、寝食を忘れて働くことが社長業であり、それは生き方そのものといえます。
後継者にとって、経営者としての生き方を体現する身近な存在が、親である先代社長ではないでしょうか。
しかし、生き方は学ぶことはできませんし、たとえ学んだとしても、先代社長のように自ら先頭に立って采配を振るったところで、決してうまくはいかないものです。

「会社の課題解決のために、どんなに頑張っても誰も賛同してくれない」

「将来を見据えた新規事業を考えても積極的に協力してくれない」

特に、日本の地方都市の経済を長らく支えてきた中小企業では、近年、経営者の高齢化に伴い、事業を後継者に引き継ぐケースが急増しています。
多くの後継者社長は、悩みに直面しながらも、周囲に年齢の近い相談相手や経営者仲間がいないケースが多く、先代が築き上げた会社をうまく経営できずに苦しんでいます。

本文は私が出版した「後継社長力」という書籍をもとに記事を作成しています。

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本書は、地域ビジネスの後継者が直面する悩みや課題を解決し、経営者としてさらなる成長軌道に乗せるために必要な「後継社長力」を身につけるための一冊です。この書籍から数回に分けて、お伝えしたいことをピックアップしてご紹介しようと思っています。


目次

  1. なぜ、後継者になったのか?

  2. 義父と娘婿のほどよい距離感

  3. 経営者を本当にやりたいのか?

▶1.なぜ、後継者になったのか?

「親が会社経営者だったため、『将来は自分が継ぐことになる』と漠然と考えていた」
「妻の実家が商売をしていて経営者の義父から後継を打診された」
「会社を経営する父の急病で東京から戻ることになった」

これらは、いずれも私のセミナーや研修に参加した後継者に「なぜ、会社を継ぐことになったのですか?」と尋ねた際の回答です。

本記事を読んでいただいている後継者の方々も、この3つのうちのいずれかが該当する人は多いのではないでしょうか。
会社を継ぎ、後継者としての任に就き、現実とのギャップに悩んでいる方も少なくないでしょう。

かつての日本においては、嫡子が家督を継ぐことが当然の慣わしとされていました。
企業においても同様に、経営者の子として生まれた以上は家業を継ぐことを常に周囲からも言われ、自らも自覚して人生を歩んでいくものでした。

しかし、近年においては子どもが親の会社を継ぐことが絶対ではなくなってきています。
役員・従業員が新たに社長に就任したり、外部からプロの経営者を招き入れたり、あるいはM&Aで会社を譲渡するケースも増えています。

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会社や世の中の状況に合わせて、事業承継のあり方にも選択肢の幅は広くなったといえます。
経営者は、複数の候補の中からベストの選択をすること。すなわち会社を存続させることで、その地方における中核企業として地域の雇用や経済を守り、成長させていくという責務を全うすることを考えます。

後継者候補の一人である、子ども自身も都心の大学に進学した後、そのまま都心の大手企業に勤めることが増えています。
そして5年から10年勤めて役付となった頃に、何らかの事情によって、父(もしくは義父)が経営する会社に入ることになります。

後継者候補となる子どもに経営者としての帝王学を学ばせて……、という経営者一族の考え方が、事業承継において語られることがあります。しかし、多くの現場を見て、後継者の悩みの相談を受けてきた身としては、残念ながら先代経営者から帝王学を学ぶなどフィクションの世界にすぎません。

そもそも、これまで親子で一緒に働いた経験はなく、子どもの経営者としての能力がどの程度であるのかは未知数です。
もちろん、優秀な大学へ進み大手企業に就職した実績と、会社員としての優秀さを認めてはいます。しかし、会社員としての優秀さは経営者としての優秀さとイコールではありません。子どもが経営者としての能力を持っているのか見極めるのは、案外難しいのです。

▶2.義父と娘婿のほどよい距離感

また、経営者に娘しかいない場合は、娘婿が後継者になるケースもあります。私の経験上でいえば、義父と娘婿という関係性は案外うまく行くことが多いと感じています。
実の親子の場合、ネックとなるのが、血縁というフィルターがあるからです。

親であるがゆえの子どもへの期待感がある一方で、遠慮なく厳しいことを言ってしまいがちです。加えて親子であるがゆえのコミュニケーション不足に陥ることもあります。その点、義父と娘婿は親子ほど近くなく、社長と従業員という関係ほど遠くはなく、ほどよい距離感でお互いに接することができます。

サラリーマン家庭で育った嫁婿は、経営者である義父に対するリスペクトもありますから、素直に話を聞き入れることもできます。
課題としては、従業員承継のケースと同様なのですが、自社株式をどのようなステップで買い取るのか。買い取るための資金をどのように準備するかといった点です。

事業承継で最も困難なのが、経営者の病気で突然子どもが呼び戻されて事業を引き継ぐケースです。もちろん、深刻な事態にまで至らずに快方に向かうこともありますが、万が一の場合は経営者の意思(遺言)もわからず、後継者も自覚と覚悟がないまま引き継ぐこともあります。

周囲も、「非常事態だからこそ、長男が引き継ぐべき」という期待半分、不安半分という雰囲気になります。もちろん、役員や従業員も同情的に接してきはしますが、後継者は一生懸命やろうとすればするほど空回りしていってしまうのです。

▶3.経営者を本当にやりたいのか?

後継者の方々にとっては、少し耳の痛い内容かもしれませんが、もう少し続けさせていただきます。このように、何らかの形で親の家業を継ぐことになった後継者ですが、
「本当に経営者になりたいのですか?」「経営者になって何がしたいですか?」など、
私のほうから後継者にいろいろ尋ねる機会があります。

もちろん、考え方も意見もさまざまですが、中には
「やりたくないわけではないけど、事業に対する志はあまり持っていない」
「先代が積み上げてきた事業を継承できるのはありがたいとは思う」
「潰さないことが最大の使命」
など、いささか頼りない意見を聞くことも多くあります。

創業社長とお会いする機会も多いのですが、現在の60代後半から70代にかけての世代は貧しい時代を経験し、昭和の高度成長期に創業していることもあり、お金を稼ぐことや、いい暮らしを得たりすることに対してとても貪欲です。

対して、後継者は子どもの頃から裕福な家庭に育っているため、先代のようなモチベーションは低いものです。

現在、第四次ベンチャーブームとも言われていますが、同じ世代でも、ベンチャー企業の創業者のように志を高く、自分がやりたい仕事を立ち上げるわけではなく、親の会社を引き継ぐわけですから、恵まれているがゆえに、経済学者ケインズが言うところの「アニマルスピリッツ」(企業家の野心的な意欲)が低いとも言えるわけです。

父親が創業した会社だとしても、自分が第二の中興の祖として伸ばしてやろうという考えは起こりません。

地方であれば、その地域の中核企業として、経済や雇用を守ること。つまり、会社をどう維持・継続・成長させていくかを消極的に考え、「自分の代で潰してはいけない」「潰さないことこそ重要」という結論に至るのです

そして肝心なのは、「その程度のモチベーションしかなく、高い志もない自分が、会社の経営をしていてもいいのか?」と、悩む後継者も多いということです。
それでも、後継社長として頑張ってやっていきたいと考えているわけです。

では次回も引き続きお楽しみに!

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