コラム 買いたい理由と、買う理由は“別物”だ 2025.11.11 買いたい理由と、買う理由は“別物”だ 起業したばかりの頃、私は「買いたい」という言葉を信じていた。 アンケートを取り、ヒアリングを重ね、 「欲しい」「買いたい」という声に支えられて、商品を形にした。 ところが、いざ売り出すと誰も買わなかった。 あのとき痛感したのは、 人が言う「買いたい」は、“未来の自分への社交辞令”のようなものだということだ。 頭では欲しいと思っても、 財布を開く瞬間に、心は別の計算をする。 * 本当に買う理由は、もっと個人的で、曖昧で、文脈的だ。 ある会社の社長が、商品を買ってくれた理由を尋ねたとき、 彼はこう言った。 「商品を見ないとわからないし、熱心だったから。」 「熱心だったから」――その一言が、忘れられない。 つまり、相手は商品ではなく、私の“態度”を買ってくれたのだ。 市場調査やロジックの前に、 人が動くかどうかは、その熱の伝わり方にかかっている。 * 後に知ったザッポスの創業者スインマーンも、同じように考えていた。 彼は顧客に「欲しいですか」とは聞かなかった。 靴をネットに並べ、実際にお金を払ってくれるかどうかを見た。 買うという行動の中にしか、真実はない。 人は「言うこと」で嘘をつくが、「払うこと」では嘘をつけない。 その違いを、私は血を流しながら学んだ。 * 結局、事業を動かすのは、“買いたい理由”ではなく“買う理由”だ。 そしてその理由の多くは、 熱心に届けようとする人間の側にある。 どんなにいいものでも、 誰かが本気で売らなければ、売れない。 あなたの会社には、 「熱心に売る」人がいるだろうか。 writing:ストロングポイント株式会社 代表取締役 加賀隼人 Tweet Share Hatena Pocket RSS feedly Pin it 投稿者: adminコラムコメント: 0 「意見」を聞くとは、情報を扱う設計を持つこと