1. HOME
  2. コラム
  3. コラム
  4. 買いたい理由と、買う理由は“別物”だ

コラム

COLUMN

コラム

買いたい理由と、買う理由は“別物”だ

買いたい理由と、買う理由は“別物”だ

起業したばかりの頃、私は「買いたい」という言葉を信じていた。
アンケートを取り、ヒアリングを重ね、
「欲しい」「買いたい」という声に支えられて、商品を形にした。
ところが、いざ売り出すと誰も買わなかった。

あのとき痛感したのは、
人が言う「買いたい」は、“未来の自分への社交辞令”のようなものだということだ。
頭では欲しいと思っても、
財布を開く瞬間に、心は別の計算をする。

本当に買う理由は、もっと個人的で、曖昧で、文脈的だ。
ある会社の社長が、商品を買ってくれた理由を尋ねたとき、
彼はこう言った。
「商品を見ないとわからないし、熱心だったから。」

「熱心だったから」――その一言が、忘れられない。
つまり、相手は商品ではなく、私の“態度”を買ってくれたのだ。
市場調査やロジックの前に、
人が動くかどうかは、その熱の伝わり方にかかっている。

後に知ったザッポスの創業者スインマーンも、同じように考えていた。
彼は顧客に「欲しいですか」とは聞かなかった。
靴をネットに並べ、実際にお金を払ってくれるかどうかを見た。
買うという行動の中にしか、真実はない。

人は「言うこと」で嘘をつくが、「払うこと」では嘘をつけない。
その違いを、私は血を流しながら学んだ。

結局、事業を動かすのは、“買いたい理由”ではなく“買う理由”だ。
そしてその理由の多くは、
熱心に届けようとする人間の側にある。

どんなにいいものでも、
誰かが本気で売らなければ、売れない。

あなたの会社には、
「熱心に売る」人がいるだろうか。

 writing:ストロングポイント株式会社 代表取締役 加賀隼人 

関連記事