地域ビジネスの承継を成功させた4人の経営者たち(三人目)借金がある先代から事業を受け継ぎ立て直した娘婿後継者
目次
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借金がある先代から事業を受け継ぎ立て直した娘婿
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働き手がいない地域の企業は働く環境整備しても定着化しなかった
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カルチャーブックの作成と浸透を実施
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カルチャーの導入で共有言語ができ、社内も良好な人間関係を構築
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社長就任後から着手したもの
▶借金がある先代から事業を受け継ぎ立て直した娘婿
四国で水産加工を営むE社。20年前まで漁師を生業としていた先代が、水産加工業の会社を立ち上げたきっかけは、知り合いの要望があったからでした。そして現在、従業員は約100名、年商約20億円規模の企業にまで成長しました。
10年前に娘婿である徳永さん(仮名)が入社しました。入社当時は先代が漁師であったこと、先代は経営についての知識がはない中で運営してきたこともほとんど知りませんでした。お客様や仕入れ先にお願いされたら断れない性格もあり、規模こそ大きくなったものの設備費などがかさみ、大きな借金を背負って運営されていました。
さらに取引先が地元の大手スーパーに偏っており、あまり新規の顧客獲得に積極的ではなかったこともあり、年々苦しい経営状態になっていきました。そんな状況で入社した徳永さんは少しでも先代の社長を楽にさせたいとの思いから奮闘しながらも、慣れない営業を一所懸命頑張りました。
お客様からの細かな要望を聞き入れながら、工場にも頭を下げて無理難題に答えていき、お客様数を伸ばしていきました。
そうした努力もあり既存の大手スーパー以外にも、大手総菜メーカーや外食・ホテルにもお客様先が増えていきました。
▶働き手がいない地域の企業は働く環境整備しても定着化しなかった
事業も軌道に乗ってきた頃、社内の環境整備に着手しました。業界的に女性比率が高く、徳永さんの会社でも8割が女性従業員で占められていました。
さらに古参のパートタイマーも多く、旧来からのやり方を変えることができずに社内のマネジメントは非常に苦戦していました。
最初に着手したのは、働く時間のバリエーションを増やすことでした。子育て世代の方も多くいるため、短時間勤務やシフトを増やして働き方を改革していきました。また、子育て中は子供の病気や行事などで休まざるをえないことも多いものです。
何かあればすぐに休める体制を作るため、チーム制にしてチーム内でシフトを工夫したりフォローできる体制を整備してきました。
休日も増やして、労働環境を劇的に変えていくことで、非常に喜ぶパートや社員が増えました。しかし、徳永さんが不思議に思ったのは、従業員の不満が減る一方で、満足している様子は感じられず、従業員の定着化に劇的な変化がなかったことです。
そんなタイミングで私のセミナーに参加していただきました。
▶カルチャーブックの作成と浸透を実施
実行力のある徳永さんはすぐにカルチャーブックの作成に着手しました。先代の経営とは違う部分や自分が大切にしている考え方を明文化していきました。
存在意義は、「集う人が楽しく仕事をして、その人たちが幸せを提供するために存在する」とし、カルチャーは従業員の誰もが理解しやすい表現で、覚えやすい数を意識して5つに絞りました。
・思いやりの心を持つ
・謙虚(あなたのおかげです)の心を持つ
・感謝(ありがとうを言う)の心
・素直(ごめんなさいを言う)な心
・プラス思考で新しいことに取り組む心
これを朝礼や夕礼で共有する仕組みを導入されています。
▶カルチャーの導入で共有言語ができ、社内も良好な人間関係を構築
幹部社員や現場社員はカルチャーフィットしているメンバーがほとんどだったため、カルチャーブックの作成後も大きな問題も無く、むしろ自分たちが率先して行動をしてパートさんの定着に協力していく必要があると認識していました。
パートさんからも評判が良く、カルチャーブックの内容に対してポジティブに行動をしてもらえるようになりました。
徳永さんはカルチャーブックから「行動の正解」を作り、変化を促していくことに手応えを感じていました。カルチャーによって社内を変化させながら、チーム間やパートさん同士の人間関係をよりいいものに変化させることができたのです。そして、会社の借金をすべて返済したタイミングで、徳永さんが社長に就任しました。
▶社長就任後から着手したもの
社長に就任してまず着手したのが、カルチャーをベースとした人事評価制度の作成です。これまで、徳永さんの頭を悩ませていた給与も、新しい人事評価制度に合ったものへと変更しました。徳永さんは幹部メンバーにも評価に混ざってほしいと思い、人事評価制度を構築に着手しました。
さらに次世代幹部育成にも着手し、カルチャーフィットした社員を中心とした新規事業開発チームを立ち上げました。
これまで、主な事業はエビの加工を中心としたBtoBの事業でしたが、ここ数年のSDGsや食品ロス問題をうまくキャッチして、加工時にこれまで捨てていたエビのガラを使って、エビのオイルを作り、ネット通販などを使いBtoCで販売。
エビのオイルは、アヒージョのソースとしてたちまち評判となりました。アウトドア需要ともマッチして生産が追い付かないほど受注となりました。さらにSNSを活用したマーケティングを実施して、大手アパレル店での販売が決まり、さらに成長しています。
今後は、「海を休ませる」というキーワードでエビの陸上養殖にチャレンジしようと準備をしています。
次回は4人目をご紹介させていただきます。
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