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【連載企画】VOl.19『後継社長力』~事業承継を成功させるための「正しい順序」とは~

地域ビジネスの承継を成功させた4人の経営者たち(二人目)安定している専門商社だが新規事業に挑んだ後継者

目次

  1. 専門商社が新規事業にもチャレンジ

  2. 先代が作ったカルチャーを変える

  3. 飲食店向けに自動化装置を開発・販売

  4. パーパスを軸にビジネスの範囲を広げていく

▶専門商社が新規事業にもチャレンジ

広島市に本社を置く、機械専門商社で、製造業や物流業などを顧客に持つD社。好景気のときは民間企業からの受注が増え、不況でも他業界からの受注は絶えないなど、取引先が安定したビジネスモデルで盤石な経営基盤を築いてきました。

3代目後継者の早川さん(仮名)は、30代からD社に入り、将来の事業承継に向けて営業や現場などさまざまな部署を経験しました。父親である2代目社長が亡くなったのは、早川さんが30代半ばのとき。突然だったため、引き継ぎや準備ができない状態での承継となり、実務面で解らないことも多く、古参幹部頼りのスタートだったのです。

社員たちは、古参幹部のほうを向いて仕事をするため、誰も新社長の言うことに耳を貸しません。古参幹部を中心に会社が回っている状態が実に7年も続き、早川さんは大きなストレスを抱えていました。

そんな状況で、早川さんは私のセミナーに参加したのです。早川さんは自分のどこがいけないのか? なぜ自分には人望がないのか? 経営者として何をすべきなのかについてずっと悩みを抱えていたと告白しました。そして私のセミナーでカルチャーフィットの話を初めて
聞き、とても感銘を受けたと話してくれました。

▶先代が作ったカルチャーを変える

実は、同社では先代社長が「(既存の)顧客ファースト」という行動指針を掲げ、浸透していたのだそうです。新規顧客の開拓を誰もしようとせず、提案しても否定的された理由がようやく理解できたのです。確かに、既存顧客だけで経営は安定していますが、10年先、30年先と長期で考えた時に、単に先代が築き上げた遺産だけで生涯会社が経営していけるとは限りません。

カルチャーやパーパスも同様です。先代が決めたからといって、後継者が守っていかなければいけないものではなないのです。後継者自身の考えであったり、パーソナリティであったり、時代の変化などに合わせて新しく作り変えて行くべきものなのです。

そして新しく構築したカルチャーに合わない幹部たちの世代交代を図り、新しく組織を作り替えるのも社長としての仕事です。早川さんは「技術で日本を元気にする」というパーパスを新たに掲げ、パーパスを軸にカルチャーを構築しました。既存の取引先に限らず、新規顧客の獲得や新規事業を推進する方針を固めました。

そんな早川さんの方針に反発した古参幹部たちですが、カルチャーを人事評価制度に導入し、1年後には降格人事を断行します。当初は、幹部にも言って聞かせるなど話し合いの場を設けたそうですが、「長年培った価値観はそう簡単に変えられるものではない」
ことを思い知ったそうです。

そして部長の中からカルチャーフィットしたキーマンを1人右腕として引き上げました。こうした思い切った組織改革によって、一時は社員が退職するという事態に陥りますが、採用の施策も早めに手を打ち、短期間で苦しい時期を脱することができました。

▶飲食店向けに自動化装置を開発・販売

また、民間では自動車関連会社との取引が多かった同社。自動車の製造ラインに使用する製品などの販売で、売り上げ全体の5割以上を占めていました。

しかし自動車産業も今後はどのように産業構造が変化していくのか、確かなことは言えません。新たなビジネスモデルや新規事業をどのように作っていこうかと試行錯誤していた時期に、コロナウイルスの世界的なパンデミックが訪れました。

海外から部品が入ってこないことで、自動車工場がストップしてしまうなど、同社にも少なからず影響を与えました。

私が新規事業として提案したのが、製造業向けの製品を飲食店や小売店などのサービス業にも販売できないかということ。

同社では搬送機も扱っており、「それなら売れるかも」とのことでした。

しかし、よくよく話を聞くと工場などで使われる搬送機は、飲食店で扱うにはオーバースペックで性能が良すぎるそうです。価格も1台300万円前後と高価で、それでは個人営業の飲食店で購入するのは難しいものです。

そこで、新たに飲食店でも使える搬送機を開発メーカーに依頼しました。予想通りお店からの注文や問い合わせも多かったそうです。

また、飲食店だけでなく、公共施設や結婚式場、宴会場、会議室など、さまざまな場所で利用されるヒット商品になりました。

▶パーパスを軸にビジネスの範囲を広げていく

更に、農業の自動化するための製品を開発中で今後の展開も模索し始めています。商社でかつ大手民間企業向けという枠に縛られることなく、「技術で日本を元気にする」という同社のパーパスを社員で共有し、商品の開発を進めていくなど、ビジネスの幅を広げていっているわけです。

次回も事例をご紹介させていただきます。

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