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【連載企画】VOl.18『後継社長力』~事業承継を成功させるための「正しい順序」とは~

地域ビジネスの承継を成功させた4人の経営者たち(一人目)ブライダルビジネス業界の課題解決に挑んだ後継者

目次

  1. ブライダル業界の抱える課題を解決した新規事業

  2. 社員満足度を高める「カルチャーブック」

  3. 出店数を増やすというビジネスモデルからの転換

▶ブライダル業界の抱える課題を解決した新規事業

福岡市に本社を置き、九州地区を中心に結婚式場の運営など、ブライダル関連事業を展開するC社。売上規模は約20億円、従業員数約100人という同地区でも有数のブライダル関連企業です。

創業社長の引退を機に、経営を引き継いだ北村さん(仮名)は当時30代前半。承継後も順調に売り上げを伸ばし、金融機関からの融資が積極的なこともあり、継続的に新規の結婚式場を出店していく経営計画を立てていました。

ブライダル業界は、出店数を増やさなければ事業規模を拡大することができず、融資を受けて結婚式場を建てて回収することを繰り返しながら規模を拡大していくビジネスモデルです。

また、ブライダル業界全体にいえることですが、離職率が高いという課題がありました。北村社長も自社の売り上げは伸びているものの、特に若手従業員の離職率の高さを気にしていました。

なぜ辞めてしまうのか? その理由を知りたかった北村社長は、無記名で「社員満足度アンケート」を行いました。会社の将来を不安に感じるか、人事評価に納得しているか、
会社が好かなど、10項目のアンケートで社員の満足度を調査しました。

中でも、アンケート項目の「会社が好きですか?」という質問と「会社に一体感はありますか?」という質問に対して、北村社長は当初「離職率の問題はあるが、80%くらいはポジティブな回答を得られるだろう」と予想していました。

しかし、結果は「好き」という回答は68%、「一体感がある」と回答したのはわずか35%という驚くべき結果になりました。

さらに、コメント欄には「何のためにこんなに頑張らなくてはいけないのか? 社長のためですか?」と書かれたことにショックを受け、「1週間眠ることができなかった」といいます。

▶社員満足度を高める「カルチャーブック」

承継後も先代に負けず、順調に売り上げを伸ばしてきたことで、経営者として自信に満ちあふれていた北村社長でした。しかし、事業拡大を推し進めていくことで、その負担が従業員にかかりました。残業が増え、仕事が忙しくなるばかり。
「社長の野望のために私たちは働いているわけでなない」という反発心が社内に蔓延していたわけです。

社員満足度アンケートによって北村社長の自信はもろくも崩れ去りましたが、同時に、課題ややるべきことも明確になりました。

後継者として、事業拡大の前にやるべきことは、社員の満足度を上げること。そして、異なる個性の社員それぞれが、最大限の力を発揮できる職場にするためには、パーパス(存在意義)を明確にして、根本的かつ絶対的な価値観やカルチャーを共有することだと
わかったのです。

こうして出来上がったカルチャーを「カルチャーブック」として明文化したのが、以下の5項目です。

1. お客様が喜ぶことが仕事だという意識

2.できませんでしたと終わらせる人はダメ

3.自分の強みを伸ばし続ける

4.挨拶の声が小さいやつはダメ

5.なぜグセをつけよう

カルチャーは、人事評価制度や採用基準にも反映させました。結果としてカルチャーに合わないと感じた役員や幹部などを含めた社員の25%は退職してしまったといいます。
「カルチャーを作ってから1年間は、正直言って辛かった」と北村社長は振り返ります。しかしその分、カルチャーフィットした若手の社員の活躍の場が増え、2年目からは、採用によってカルチャーフィットした人材を補填していくことで徐々にストレスからも解放されたといいます。

そして3年後に再び社員満足度アンケートを行ったところ、「会社が好きですか?」という質問に98%が「好き」と回答し「会社に一体感はありますか?」との質問にも85%が「ある」と回答するなど、同社にカルチャーが確実に根付いて行き、売り上げもさらに伸ばすことができたのです。

▶出店数を増やすというビジネスモデルからの転換

しかし、売り上げは伸びているものの、ブライダル業界の新規出店による事業拡大というビジネスモデルを継続していけば、また社員の負担感が増していくだけです。そこで私が提案したのは、まずは借金経営から脱し、せめてキャッシュリッチになってから新規出店をしたほうがいいということです。北村社長も大きく頷き、新規出店による事業拡大路線から脱し、ブライダル業界の課題を解決するような新たな事業を始めます。

結婚式は土日祝日に集中しますし、1年間のうち春と秋(特に6月)は予約でいっぱいになるものの、夏と冬は暇となるなど繁忙期と閑散期がはっきり分かれています。同社では結婚式場ごとに多くのシェフやパティシエが働いているのですが、閑散期は当然仕事もなく、暇になってしまいます。

そこで、北村社長が考えたのがシェフやパティシエの人材派遣業です。夏の結婚式の閑散期に、リゾートホテルのレストランなど需要の高いところにシェフを派遣したり、平日でもレストランなどにシェフを派遣したりするサービスです。

この新規事業はシェフにとってもメリットがあります。料理の腕を磨き、新たにレシピを覚えるために、他のレストランでの経験を積みたいと考えるシェフも多いと言います。実際に何人かの優秀なシェフから相談を受けた北村社長が、会社を辞めずにシェフの希望を叶えるビジネスとして思いついたのが派遣業だったというわけです。

ほかにも、さまざまな新規事業を立ち上げ、計画通りにはいかなかった事業もありますが、「カルチャーブック」というカルチャーにこだわり、社員がみな一体感を持って仕事に望み、成長を続けています。

次回も事例をご紹介させていただきます。

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