▶小室哲哉が築いた時代とこれからの音楽
少し前であるがNewsPicksという経済メディアを見ていた。
そこで「小室哲哉が築いた時代とこれからの音楽」という動画を見ていて大変勉強になった。音楽業界はほとんど勉強したことが無かった。小室哲哉氏がビジネスを語れるのか?という懐疑的な感覚で再生した。
まずは、音楽業界の変化からすり合わせる。大きくは提供方法が変化している。「CD→ダウンロード→ストリーミング」へと移った。・CD:1,000円/2曲(ヒット曲はほぼ1曲)・ダウンロード:数百円/曲
・ストリーミング:500円/月、計算するとストリーミングは0.3円/曲らしい。
CD時代は1曲1,000円で今では0.3円というこの落差は凄い。曲を作るのに作業は同じでも価格が3,000倍も下がっている。だから、今までのようなスタイルで作曲しないし、やっても儲からないのがわかる。流行り廃りが早いなんてレベルではなく、生み出した製品自体がビジネスモデルによって、価値を下げてしまった。小室哲哉氏は、「音楽はそんなに価値が無いのか?と受け入れられない自分がいる」と言っていた。素直なコメントだ。所々で悔しさが滲み出ていた。小室哲哉氏は私の中でレジェンドだ。こんなにCDを売った人はいない。大変尊敬しているが、彼はやはり
ビジネスマンではない。クリエイターだ。
まさにビジネスモデルが変わり、価値が変換された事例である。
何が変わったか?私なりの解釈であるがまとめてみた。
▶音楽業界におけるビジネスモデルの変化
1.「お客様へ提供する方法の変化」
上記でも記載したが「CD→ダウンロード→ストリーミング」へと移り変わった。
そして、ビジネスモデルが変わると製品自体が変わってしまう。
2.「製品の小型化、コンパクト化」
これは、スマホの特性やサービスを提供するプラットフォーマーに依存した
設計になっている。ここ最近の曲と90年代の曲を比べるとよくわかる。
・イントロが短く・曲も2~3分以内
3.「KPIが変わる」
そして、マネタイズの方法は2つ。「イベントの開催」「プラットフォーム内で再生回数を増やす」
気づきがあったのは再生回数である。昔からたくさん聞いてほしいという想いはあると思うが
CD・ダウンロード時代は再生回数が増えても実は何の価値もない。CMやカラオケやその他利用されると利用料は増えるが、CDは1,000回聞いても1,000円だ。一方でストリーミングは再生回数が増えれば原価が安くなる。月額500円で10曲聞くより、100曲聞くことでお得感が出る。
よって、確実に退会しない。或いはYouTubeだと広告効果が出る。業界全体のKPIは再生回数になっていく。
4.「繰り返し使う仕組みを作り、滞在・接触時間が増える」
再生回数を増やす手っ取り早い仕掛けが「ダンスミュージック」にしてしまうことだとおもった。
これに気づいたのは遅く、DA PUMPの『U.S.A.』という曲の時に分かった。それ以降、多くの音楽に振付が付きビジネスになることが分かった。ここで分かると思うが、振付のついた曲は真似をする。ダンスや振付を真似しようと何度も再生をするからだ。ここ数年は踊れる曲が膨大に増えている。
5.「民主化」
最後に、それでも小室哲哉氏はクリエイティブの重要性を唱えている。
「音楽は人生を変える、今でも聞くとその思い出が蘇る」など独特の効果があると。
確かに、その効果は変わっていないと思う。プラットフォーマーが台頭しクリエイターが民主化したことを忘れてはいけない。誰もがクリエイターになれる時代になった。私の世代は小室哲哉氏が神であった。しかし、現代はそうではなくなった。素人が音楽プロデューサーとして曲を世の中に出すということも可能になった。価値は提供できる量に比例する。よって、過去と比べると相対的に価値が下がっている。
更にクリエイティブの世界ではインフルエンサー、ユーチューバー、インスタグラマーなどと呼ばれる時代も間もなく終焉を迎えると思っている。何故ならば、プラットフォームに依存しないクリエイターが出てくるからだ。既にプラットフォームの垣根の無い時代に突入している。これは他の業界でも同じような流れがあるため言い切れる。個人的には、これからクリエイターや何か作り出せる人材が今まで以上に評価される時代に突入すると思っている。
最後にまとめると、
1.「お客様へ提供する方法の変化」
2.「製品の小型化、コンパクト化」
3.「KPIが変わる」
4.「繰り返し使う仕組みを作り滞在・接触時間が増える」
5.「民主化」
通り過ぎないと気付かないのがビジネスモデルの変化である。
対岸の火事でしか、兆候はない。