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【連載企画】VOl.2『後継社長力』~事業承継を成功させるための「正しい順序」とは~

後継者のやるべき仕事は何なのか?


目次

  1. 後継者が現場で死ぬほど働いても人望は高まらない

  2. 実際に引き継ぐまで社長の仕事はわからない

  3. 「助走期間」では多くの場合、準備できない

▶後継者が現場で死ぬほど働いても人望は高まらない

後継者の年齡にもよりますが、会社に入るとまずは5~10年間にわたって下積みや役員を経験していくことになります。

そして30代半ばから40代で承継するというのが大まかな世代交代までのタイムスケジュールとなります。

その間、「とにかく現場へ行け」と営業や製造、企画などさまざまな現場を経験するよう後継者は言われることになります。

理由は2つあって、
1つは自分の会社の仕事を覚えること。
金融業界から製造業やIT業界からサービス業など、畑違いの仕事をしてきた後継者に対して、イチから仕事を学ぶには現場を経験することが何よりだからと考えるためです。

もう1つは、多くの従業員と触れ合うことによって、人望を高めたいと考えているからです。現場で他の従業員以上に一生懸命働いて、単に社長の息子だから将来引き継ぐのではなく、一人の人間として頑張っているから社長になるんだと。

この人が社長になったら応援してあげようと思えるような関係性を作らせることが目的です。最初から役員室にいたりパソコンのキーボードを叩いたりしているだけでは、身につけることのできない現場経験と人間関係を構築するわけです。

どうでしょう? 一見いい話のように思えるかもしれません。しかし私は、この考えは必ずしも正解とは言えない気がしています。

結局、現場で経験したことが後の経営で役に立たず、人望をつけることができなかったと
いういくつもの事例を見ているからです。
実際に、現場にいた時代を無駄な期間だったと感じている後継者もいます。

同じ釜の飯を食べて、苦労を共にすることで人間関係を構築したり人望を高めたりすることができるという父親世代の考え方も、その全てを否定するものではありません。

一方で後継者は、丁稚奉公的にイチから経験するよりも経営者として、会社を俯瞰して見る目を養う時間がほしいと考えています。

▶実際に引き継ぐまで社長の仕事はわからない

じゃあ、現場も大事だけど経営についても学びたいと、息子から言えばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、先にも話したように親子であるがゆえにコミュニケーションが希薄な部分もあって、実際にはなかなか言い出すことはできません。そこで後継者が何をするのかといえば、現場で実務的なことを経験しながらも、経営に関わるような仕事を自ら探し出してやっていこうということです。

その典型例が、会社の課題を見つけてそれを解決するための新規事業を考えるということです。既存事業の「深化」と新規事業の「探索」を後継者の手で行おうとする考えです。

例えば製造業で多いのが、他社ブランドの製品を製造するOEMで、地方の製造業ではOEMを主力事業とする企業はけっこう多いものです。

ただし、大手メーカーからの発注数が多く、安定するので売上規模は大きい半面、万が一大手メーカーがその製品の販売をやめてしまったら、製造のために立てた工場もラインも、人員もすべて不要となってしまう。その恐怖感を経営者は常に感じています。

そこで考えるのが、自らもメーカーにシフトチェンジすることです。特に今ではECがあります。取次や小売店を介して販売するなどイチからサプライチェーンを構築することなく、ネットで直販するD2C(製造者がダイレクトに消費者と取引をすること)も増えてきています。メーカーとして製品を作り、ネットで販売するコンシューマービジネスを始めるわけです。

もちろん、発想としては間違いではありません。しかし、大量の受注があって生産する従来のOEMとは異なり、1つ1つBtoCで販売することになるため、売上規模は全く異なります。

ECを立ち上げても、月に10数万円の売上にしかならないということもザラで、そこに場所や人員、コストを割いてまでしてやることなのかという周囲からの反発が起こります。ましてや、会社内での経験のまだ浅い“経営者の息子”が立ち上げた事業ともなればなおさらです。

「遊んでいるんじゃないんだから」と冷ややかな目で見られるのがオチです。

新規事業は、会社将来を見据え、リスクマネジメントしていくなら、当然持つべき視点ではあるのですが、実は後継者として手を付けるべき順番としては、だいぶ優先順位は低いのです後継者が勘違いしがちなのは、まず何らかの実績を作って周囲を認めさせようと思ってしまうことです。

ところが、最初にそれをやってしまうと、大抵は失敗しまう典型的なパターンなのです。

▶「助走期間」では多くの場合、準備できない

そもそも、現在のビジネスモデルのままでは、リスクがあることは親である経営者も
十分承知しています。

両利きの経営で、大きな利益を生み出している現在の事業だけではなく、今後の可能性を模索していくことも重要です。子どもが知らないだけで、過去にも何度か新規事業にチャレンジしていたのかもしれません。

ですから、息子の新規事業に関しても内心は「そんなこと前にやってみたけどうまくいかなかった」とか、「確かに俺も昔は同じことで悩んでいた」などと思っています。

それでも口に出さないのは、「深化・探索」という発想自体は間違いではないからです。

しかし、既存のビジネスで大きな利益を上げ、うまく行っているほど、なかなか真剣に向き合うことができずに、結局後手に回ることが多くなります。

また、新規事業を「探索」というくらいですから、誰もがパッと思いつくようなありきたりなアイデアだけでうまくいくわけではありません。

先程のように「主力ビジネスがOEMで売れるいい製品を作ってきたのだから、自社のブランド名を冠した製品を開発してコンシューマービジネスを展開する」だけでは、まだまだ浅いわけです。

先代社長は、常に自分ひとりの考え方と自分なりのやり方で会社を成長させてきました。そのため息子にも同様に自分で考え、自分で経験し、自分で成長することを望みます。

しかし、先にも述べたとおり、当の本人には、父親のようなアニマルスピリッツはなく、
メンターとなる存在が必要だと考えます
そこに親子間の齟齬が生じ、後継者は結局学べないまま、社長の椅子に座ることになってしまうのです・・・。

次回は、具体的な失敗事例をご紹介します。

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