目次
1.なぜ曖昧な言葉が組織を壊すのか
2.定義を軽視する職場は、コストと誤解の温床になる
3.言葉は「感覚」ではなく「設計」である
4.成果を出す人が共通して守っている原則
5.最後に問いたい:「しっかりやれ」の意味は何か
1.なぜ曖昧な言葉が組織を壊すのか
「しっかりやって」「ちゃんと考えて」「気を利かせて」
この手の“ふわっとした指示”が横行している組織は危うい。
曖昧な言葉は、発信者には都合が良い。責任を回避できるからだ。
しかし、受け手には不安しか残らない。
特に日本社会は「言わなくても察しろ」という文化が根強く、
“察する能力”に欠ける人間は「気が利かない」「仕事ができない」と烙印を押される。
だが本来、仕事はそんな“能力”に依存すべきではない。
2. 定義を軽視する職場は、コストと誤解の温床になる
「課題」と「問題」の違い。
「会話」と「コミュニケーション」の意味の差。
「簡単にできる」と「すぐ実行できる」のニュアンスの違い。
些細に思えるこの違いが、現場では圧倒的なインパクトを生む。
定義のズレは、思考のズレとなり、
やがて行動のズレ、成果のズレ、そして信頼の崩壊へとつながる。
曖昧な指示で動いたチームは、曖昧なアウトプットしか出せない。
3. 言葉は「感覚」ではなく「設計」である
コンサルタントとして現場に立つようになって痛感したのは、
「言葉は建築と同じ」ということだった。
練られた言葉は、人の認識と行動をデザインする。
逆に、練られていない言葉は、誤解と衝突を生む。
指示を出す側が「何を期待し」「何を良しとし」「どこを目指すのか」を定義しない限り、
チームの時間は“調整”と“修正”に費やされていく。
そのコストを、現場の人間が背負わされている。
4. 成果を出す人が共通して守っている原則
ある先輩はこう言った。
「コンサルタントは、曖昧なものを定義するのが仕事だ」
彼は勉強会に電子辞書を持ち込ませ、
「理念とは何か」「品質とは何か」を何時間も議論させた。
一見、非効率に見える。だが、それが“余白のない精度”を生む。
曖昧さを放置しない姿勢が、結果として最短の成果につながる。
ドラッカーも言っている。
新しい定義が、新しい認識を生み、それはイノベーションになる。
5. 最後に問いたい:「しっかりやれ」の意味は何か
「忙しくて死にそうだ」と思っていた時期、
私は上司の指示を正確に定義してみた。
すると、仕事の半分が不要だとわかった。
それは衝撃だった。
言葉のズレが、いかに余計な仕事を生んでいたかに気づいた。
部下が成果を出せないのは、
その人の能力ではなく、上司の言葉に原因があるかもしれない。
だから言いたい。
「しっかりやれ」と言う前に、
“しっかり”とは何を意味するのか、定義してほしい。
しかし、
これ言うと嫌われるかもしれない。