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研修が現場に落ちない本当の理由と解決策

『社員研修』の”課題”は何十年も変わっていない!

”研修をやらない理由”ベスト3は何十年も変わっていない。
1位:効果が無い
2位:時間が無い
3位:お金が無い

更に、社員研修の課題について、実施している企業はどのような課題に悩んでいるのでしょうか?

あるセミナーで実施した結果、主要な回答は以下の通りです。
・動機づけができない(ない)
・効果測定ができない
・現場に落ちない・効果が見えない

・上司フォローができていない(やりっぱなし)

社員研修サービスの顧客満足度は低いと思います。
特に購買者(人事担当や責任者)や購買意思決定者(経営層)からも不満の声が後を
絶ちません。

細かく課題を把握すると様々な要因が原因であることが分かってきました。
それらをまとめてみました。全てを包含はしていないですが、主要な所は抑えています。

下図の左側から見てください。

画像1

研修前の課題として、まずは①階層内の能力格差がある、という課題です。
これは多くの会社が階層別教育を導入しています。
階層別なので、同一階層で同一テーマの研修が行われます。

ここで必ず問題になるのが、「どのレベルに合わせて実施するか?」です。

そして、ほとんどのケースで研修レベルは一番低いレベルに合わされます。
特に中堅・中小企業は階層内格差は大きいです。そうすると何が起こるでしょうか?
②研修内容と受講者レベルのミスマッチが起こります。

特に優秀層はレベルの低い研修内容に不満を持ちます。
そして③「何で俺が受けなくちゃいけないの?」と反発します。

社内の優秀層なので、組織内の声も大きく響きます。
それが経営者に届くと経営者は悩み、人事部門に不満を伝えます。
人事部門も一生懸命考えているのに優秀層から不満が出るので、やる気を失います。

更に、多くの企業が④計画者と受講者が違うので、当たり前ですが
⑤受講者の動機づけが無いです。
よって③「何で俺が受けなくちゃいけないの?」と反発します。

次に、研修中ですが、
⑥受講者のレベルがバラバラだと研修中の意見交換で悲劇が起こります。

優秀層が積極的に意見を出しても、ほかのメンバーが全くやる気がない・・・。
これを体感するとますます優秀層は⑦意義を感じなくなります。

そして、研修受講後は決まって、
⑧上司がフォローするように仕組みを作ります。

ここでも上司が忙しくてほとんど対応できないのが実態です。
結局、やりっぱなしになり、⑨仕事に活用できていないので、意味が無いとの判断になります。

ここで整理していますと、上司フォローができないので現場に落ちないというのが、多くの会社の仮説になります。

画像2

さらに、いろんな会社の方に現場に落とすために何をやっているか?について質問すると以下の解答が返ってきます。

画像3

結局、上手くできていないです。

私はたくさんの受講者と話をして現場に落ちない理由を探ってみました。
受講者に話を聞くと様々な回答があり、どれももっともらしく聞こえます。
特に研修内容についてが多く、「現場感がないので忘れる」が多い回答でした。

確かに、仕事に直結する内容は現場に落ちやすい。
しかし、現場感を強めるとデメリットもあります。
それは汎用性に欠けるので全ての事象を網羅しなくてはいけないという欠点です。
情報量が多くなり伝わりにくいという壁があります。

よって、個別具体事象を取り上げるというよりは、なるべく概念的な話を学び、
自分で考えて現場に合わせるという内容が中心となります。
ただ、デメリットは現場に落ちないことになります。

更に話を聞き進めると以下の内容が出てきました。
ある方が教えてくれました。
「加賀さん、正直に言いますけど、聞いてもすぐできないですよ!」
と言われました。私の中でビビッときました。

ここでひとつの仮説ができました。
忘れるもあるが、そもそも聞いても「できない」があるのではないか?

それからは、弊社のサービスを大きく変えて検証に入りました。
やったことは弊社で提供している研修全てにトレーニングを付随させてみたのです。

トレーニングは、研修で聞いたことができるのか?を確認するために、合否判定を入れて
検証をしました。

画像4

結果は、トレーニングを受講してもらった人が426人で
研修でお伝えした内容をトレーニングで実践してもらい合否判定で合格となった人は
たった、80名だった。

なんと!約2割の人しか、聞いたことをすぐに実践できる人がいなかったんです。

この結果によくよく考えれば当たり前の結果だと思いました。
人間はそんなに優秀ではないことがわかりました。

これでひとつの仮説が成り立ったとおもいました。

現場に落ちない本当の理由は「知ってるけどできない」からである。

画像5

ではどうすべきか?について記載します。
大きくは3つです。

①階層別教育から個人別教育計画へシフト
階層別は効率的であるが、効果的ではない。
個人別が組織サイズから難しいという会社があるとおもいます。
この場合は2つ提案しています。
(1)課題別の教育計画に変更する
(2)まずは階層をひとつに絞って、その階層内で個人別を作ってみる

(主任に絞って、主任を対象に個人別教育計画を作成する)

②上司フォローができないならアウトソースする
これは最近流行りの1on1に近いですが、課題は上司の時間が無いというところです。
これもアウトソーシングする流れが増えています。
上司のスキル不足がある中堅・中小企業において、上手くできないという理由もあります。
ただ、上司も同席をさせて学ばせて、半年間はアウトソーシングして、その後は上司がやるという流れが一般的です。

③トレーニングを中心として研修内容に変更する
研修のゴールは大きく3つあると思います。
(1)知らないから知っているへ
(2)知っているからやれるへ
(3)やれるからやっているへ

ほとんどの研修が(1)を中心としています。
そして(2)を研修としてやっているのは技術的な研修のみだと思います。
これを技術研修だけでなく、職種別や階層別でも導入することを提案しています。

これを社内研修でもおススメしているのですが、
お客様からトレーニングの設計のやり方について相談を受けます。

私の経験談を少し説明させていただきます。

トレーニングをどのように作るか?について、かなり苦慮をしました。
たくさんの時間を使って調べた結果、非常に参考になった書籍を紹介します。

「成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法」です。
これはハーバード大学教育大学院(HGSE)を中心に研究が行われおり
ハーバード大学教育大学院カート・フィッシャー教授・ロバート・キーガン氏の実証研究を書籍で紹介しています。

専門書に近いので読みづらいです。
しかし言いたいことを1枚にまとめました。

一言で言うと、”スキルは「点・線・面」でトレーニングをしていくということが効果的である”と述べています。

画像6

社内トレーニングでよく聞くのが”ロープレ”(ロールプレイング)です。
ロープレはここでいう面のトレーニングなり、一番最初のトレーニングとしては適切ではありません。

ここでは、要素分解をして、まずは点からスタートして複数要素をトレーニングし、
最後にシュチュエーショントレーニング(面)を実施することを進めています。

なぜ、面からではダメなのか?こう述べています。
「何が悪いのか?できてないのか?」が分かりにくい。

確かに、私もそのような経験があります。
後輩にロープレをやっていて、壊滅的過ぎて何を指導していいか迷った経験があります。
このようなことが無いように、点から進めていくことが効果的であるという話は非常に参考になりました。

これを踏まえて全てのトレーニングに「点・線・面」を入れました。
社内研修のトレーニングにも使えると思うので参考にしてください。

最後にまとめると、
“研修が現場に落ちない本当の理由と解決策”は
今まで惰性でやっている階層別教育をやめる。
個人にフォーカスした育成を考える。
トレーニング要素を中心とした内容に変更する。

これからの【社会人教育の”スタンダード”】になっていくのではないか?と
思っています。

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